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連載小説
Koyuri Shiina
第1話 1/2
PROFILE
椎名こゆり
(しいなこゆり)
現役風俗嬢。
「イメクラやホテヘルを経て、現在は都内で車に酔いつつデリヘルやってます」
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高森さんと、初めて会ったときのこと、時々ふと思い出す。
『会員、写指、90、502…ごーまるに…』
湿っぽい臭いのする、ボロいエレベーターを降りて、普通のお客さんだといいなと願いながらドアの前に立った、ホテヘル嬢のあたし。
(ピンポーン……ピンポーン………)
3回目のチャイムで、彼はドアを開けてくれた。
「ごめんね、ちょっとウトウトしてた。もしかして、いっぱい鳴らしてくれた?」
そう言いながら、すかさずこっちに手を出してきた。
なに?
と思ったけど、ああ、そのバッグをこっち貸しな、ってことか。
「あ、ありがとうございます」
「ここに置いとくよ」
どうやらフツーの人らしい。
あたしは少し安心して、ゆっくり両手で靴を脱ぎはじめた。
その日、あたしはとにかくツイてなかった。
受付のミスなのにうるさく急がされたり、オプション代でモメたり、しつこい本指名に本番をせまられて、涙ながらの演技で断ったり(もちろん逆ギレされた)で、正直すっかり帰りたいモードだった。
もし最後のこのお客さんが迷惑な人だったら、とてもじゃないけどやってられない…。
そう思っていたから、ホッとした。
「もう、超ピンポンしましたよ! 部屋まちがったかと思って、帰っちゃおうかと」
「うっそ、超ごめん!俺けっこう本気で寝てたんだなあ」
「……嘘です、3回しか鳴らしてなーい」
「えー。あーでも3回でも多いよね」
オッケー、この人には優しくできそう。
まだちょっと目をこする彼の横に、クスクス笑いながらくっついて座った。
「あの、ていうか、あたしが遅くなったんですよね?
今日なんか色々あって、お店の受付ミスとか…しかも前のお客さんがなかなか帰してくれなかったりで…すみません!」
「ああ、いいよ別に。
確かに『すぐ伺えます』って対応されたわりに、来ねえなー、とは思ったけど。1時間くらいは『すぐ』のうちだし」
あたしの顔をまじまじと見ながら、本当にちっとも怒ってないみたいにさらっと言う。
でも、サイドテーブルの上の灰皿が『そうとう待ったよ』ってものがたってるんだよね…。
このタバコの本数と、プラス、寝ちゃったくらいの時間だもん。それって、「1時間くらい」じゃ済まなくない?
第1話「だいじょうぶ」
1/2

前回終わりのあいさつをしてしまいましたが、また新しいお話がはじまることになりました☆
楽しんでもらえたらうれしいです!